一位イチイ
一位(イチイ)はイチイ科の常緑の針葉樹。3月~4月にかけて花を咲かせ、オレンジ色の多肉質の仮種皮の中に黄緑色の種が包まれています。
生薬名は【一位葉(いちいよう)】、漢名は【紫杉(しさん)】といいます。
北海道、本州、九州、四国に分布し、サハリンや朝鮮半島、中国、シベリアにも自生しています。
北海道のアイヌの人たちは、イチイの木を枯らしてから熱を加えて曲げて弓を作ったといわれています。また、『和名抄(わみょうしょう)』では、「柡(サクギ:イチイを指す)の木をもって笏(しゃく)とする」と記されています。
笏(しゃく)は高官が儀式の時に用いる板きれですが、927年の延喜式から一位(イチイ)の木で作られていると伝えられています。正一位、従一位の名は一位(イチイ)の名前からきています。
なかでも、飛騨高山の位山(くらいやま)産の一位(イチイ)は巨木が多く、主に位山産の一位(イチイ)が笏の材料として用いられていました。
一位(イチイ)の葉の一位葉(いちいよう)には、アルカロイドのタキシン・フラボノイドのクエルセチン・ステアドピシチンが含有されています。
生薬としては、利尿・通経・糖尿病に用いられ、体の中の余分な水分を排出し、生理を整えてくれる他、含有成分による血糖降下作用や中枢神経抑制作用から糖尿病改善にも役立ちます。