亀の甲羅かめのこうら
亀は爬虫類ですが、およそ2億1000万年前から地球上に生存していたとされています。陸に住む種類の亀、水の中で暮らす種類の亀、また水陸両方で生活する亀がいます。
亀の甲羅(こうら)はふたつあります。
ひとつは背中の甲羅、もうひとつはおなかの甲羅です。背中の甲羅は皮膚の一部のウロコで、おなかの甲羅は鎖骨や肋骨が変形したものといわれています。
さて、
中医学の基礎理論に陰陽五行論があります。宇宙のすべてを陰と陽の二元に分ける考え方と、木火土金水の五元に分ける考え方を組み合わせたものですが、ここでは陰陽を例に出してみます。
太陽の当たる部分が陽にあたるので、背中の甲羅が陽、おなかの甲羅が陰、の性質をもっていると考えます。日中、太陽の日差しの届く場所は温かく、日陰が寒い、という自然現象のとおり、陽は温める性質が強く、陰は温める力が足りない、といったことを意味します。
亀の背中の甲羅を生薬名では「鼈甲(べっこう)」といい、おなかの甲羅を「亀板(きばん)」もしくは「亀甲(きっこう)」といいます。
鼈甲(べっこう)はスッポン科シナスッポンの背中の甲羅を用います。亀板(きばん)はイシガメ科クサガメのおなかの甲羅を用います。鼈甲(べっこう)は『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』の中品、亀板(きばん)は上品として、それぞれ収載されています。
性質 作用 例 鼈甲
(べっこう)
背中の甲羅陽 滋陰潜陽・抗炎症・軟堅散結 陰を養って体の上部へ昇った熱を冷ます、炎症を抑える、硬くなった組織を軟化させて散らす 亀板
(きばん)
お腹の甲羅陰 滋陰潜陽・養血補心・益腎健骨 陰を補って体の上部へ昇った熱を冷ます、血を養い精神安定へ導く、腎の働きを助けて骨を丈夫にする
亀板(きばん)は、亀ゼリーといえばご存知の方もいらっしゃると思います。香港では亀苓膏(きれいこう、ぐいりんごう)という名前で以前から特に女性に人気のある薬膳デザートです。
亀ゼリー、そのままでは食べにくいので甘いシロップや蜂蜜などをかけていただくそうですが、それでも人気なのは、美肌とデトックス、若返りに定評があるからだそうです。亀板(きばん)の成分は膠質、脂肪、カルシウム塩などで、膠(にかわ)=ゼラチン=コラーゲンです。
亀苓膏は亀板をはじめ、美容に良いとされる生薬を複数配合(メーカーによって種類や配合が異なる)して作るゼリーです。なるほど、確かに女性には魅力的なデザートですね。